住宅ローン控除は、所得税額や住民税額が減額になるので節税効果が高く、行わない手はない制度です。ですが「具体的に何をすればいいの?」「控除には要件があるの?自分は対象なの?」「何の書類を揃えて、どこに提出すればいいの?」とわからないことも多いのではないでしょうか。控除手続きの期間は毎年決まっており、特に初年度は多くの書類が必要になります。準備が遅く書類が揃わず、結局控除が受けられないとなると、非常にもったいないですよね。そこで、この記事では住宅ローン控除を受ける要件住宅ローン控除の流れと必要書類控除額の計算方法住宅ローン控除の注意点について、解説します。この記事を読むと、住宅ローン控除の流れや必要書類から注意点までがわかり、段取り良く手続きが進められるようになります。ぜひ最後までお読みください♪関連記事:【インテリアコーディネートの依頼・相談】事例・費用相場・流れ・サービス内容について解説します住宅ローン控除とは?誰でも受けられるの?住宅ローン控除は「住宅ローン減税」と呼ばれることもあり、正式名称は「住宅借入金等特別控除」といいます。どんなものなのか一言で言うと「住宅ローンを利用して物件を新築、取得、リフォームあるいは増改築した場合、所得税額が控除される制度」です。年末の住宅ローン残高によって控除額は算出され、10年間あるいは13年間適用されます。ただし、住宅ローン控除は誰でも受けられる訳ではなく、一定の要件(以下)を満たしていることが必要です!住宅ローン控除を受けるための要件について住宅ローン控除を受けるためには、下記の要件を全て満たす必要があります。控除を受ける本人が、住宅ローンを使って購入した住宅に住んでいること家を新築または取得した日以降6か月以内に入居していること(新型コロナウイルス感染症で入居が遅れた場合は特例あり)控除を受ける年の12月31日まで住み続けていること給与や他の所得の合計が2,000万円以下であること(令和4年度から)床面積(登記面積)が50㎡以上(40㎡以上50㎡未満でも特例を満たせば適用)2分の1以上を居住スペースとして使用していること住宅ローンの返済期間が10年以上で、分割返済であること居住の前後各2年、計5年間の間で「居住用財産の譲渡所得の課税の特例」など特例を受けていないこと令和3年度までは合計所得が「3,000万円以下」であることが要件でしたが、令和4年度から改正税制が適用され「2,000万円以下」になりました。また、中古住宅、認定住宅、敷地も取得した場合には上記に加えて特有の要件があるので、国税庁のホームページを確認してみましょう。住宅ローン控除の流れと必要書類について住宅ローン控除の初年度は、会社員でも自分で確定申告を行うことが必要です。住宅ローン控除のための確定申告の流れと必要書類について、説明します。【初年度】住宅控除のための確定申告の流れ確定申告は「購入・入居した翌年」に行います。具体的な日程は下記のとおりです。住宅ローン控除のみ行う方:1月4日から3月15日確定申告を行う事項がある方(個人事業主など):2月16日から3月15日会社員・個人事業主ともに下記の流れで確定申告の手続きを行います。①確定申告に必要な書類を収集する勤務先から渡される源泉徴収票の他に、登記事項証明書や契約書の写しなど、必要な書類は多岐に渡ります。■初年度の確定申告に必要な書類確定申告の期日に間に合うよう、事前に必要な書類をチェックし、早めに収集するようにしましょう。②必要書類に記入記入書類は下記のとおりです。一般的に会社員は「確定申告書A」、個人事業主は「確定申告書B」を使用します。1. 住宅借入金等特別控除額の計算明細書「居住開始日」「土地や家屋の購入費用」「床面積」「住宅ローンの年末残高」欄について、埋めていきます。2. 確定申告書A(会社員の場合)源泉徴収票の内容を転記します。住宅耐震改修特別控除額の欄に「1. 住宅借入金等特別控除額の計算明細書」で算出された額を転記しましょう。令和5年より確定申告書Aは廃止され、Bに統一されます。3. 確定申告書B(個人事業主の場合)こちらも源泉徴収票の内容を転記します。③税務署へ書類を提出税務署に直接書類を提出する方法の他に、税務署へ郵送あるいはインターネット(e-Tax)からでも提出可能です。④還付金がある場合、口座に振り込まれる申告後、1か月〜1か月半で指定した口座に振り込まれます(e-Taxで確定申告した場合は3週間程度)。【2年目以降】住宅ローン控除のための手続きと必要書類2年目以降は、会社員と個人事業主で手続きや提出書類が異なります。会社員会社員は給与所得以外に収入がなければ、2年目以降は確定申告する必要はなく、勤務先の年末調整のみで控除してもらえます。必要書類は下記の2つです。①「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」兼「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」確定申告をした年の10月頃に税務署から届き、9年分あるいは12年分の書類が入っています。毎年勤務先に提出が必要なので、大事に保管しておきましょう。②「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」毎年金融機関から送付されます。2種類以上のローンを借りている方は複数必要です。個人事業主個人事業主は確定申告することで控除が受けられます。必要書類は下記の2つです。①「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」②「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」住宅ローン控除でいくら税金が戻ってくるの?住宅ローン控除で具体的にいくら税金が戻ってくるか気になりますよね。令和4年度に大きな税制改正がありましたので、まずはこちらから説明していきます。居住開始時期ごとに控除率・控除上限額などが異なる2022年度(令和4年度)に税制改正があり、下記の表のとおり居住開始時期ごとに控除率や上限額などが異なります。■居住開始時期ごとの控除期間・控除率・控除上限額・借入限度額(注1)買取再販とは、不動産会社が買い取った住宅をリフォームして売り出す物件のこと(注2)認定住宅とは、「認定長期優良住宅」または「認定低炭素住宅」と国が認めた住宅のこと(注3)ZEH(ゼッチ)とは「net Zero Energy House」の略語で、太陽光発電などでエネルギーを創り、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家のこと(注4)新築で令和5年までに建築確認がされている場合には2,000万円今回の税制改正で影響が大きいのは、令和4年から控除率が今までの1%から0.7%に引き下げられたことです。また、住宅ローン控除の最大適用期間は10年から13年に延長されています(中古住宅、令和6年以降入居のその他住宅は10年)。そして、住宅の種類によって借入限度額が細かく分けられました。これは「温室効果ガスの排出量をゼロにする」という目標を住宅市場にも適用するという政府の考えに基づいたものです。政府は省エネ住宅などの環境に配慮した住宅購入を推進しており、それ以外の住宅の控除額は減少しています。住宅ローン控除額の計算方法住宅ローン控除は「年末時点のローン借入残高に控除率を乗じた額」が所得税額から控除される制度です。所得税から引ききれなかった額については、住民税額から控除されます。具体的な例で計算してみましょう。【例】居住開始時期は令和4年。控除率は0.7%買取再販物件の省エネ基準住宅を購入。借入限度額は4,000万円年末時点のローン残高は5,000万円本来の所得税は8万円翌年の住民税は18万円年末時点のローン残高は5,000万円ですが、借入限度額は4,000万円なので控除額は「4,000万円×0.7%=28万円」です。所得額の8万円は全額免除になります。残りの20万円は翌年の住民税から引かれますが、住民税からの控除額上限額は9万7,500円なので、実際に控除される額は、「8万円+9万7,500円=17万7,500円」になります。住宅ローン控除で注意するポイントここからは住宅ローン控除制度において、注意したいポイントを解説します。本人が転勤になったらどうなるの?住宅ローン控除は「控除を受ける本人が住んでいること」が適用条件です。しかし、本人が転勤となった場合でも「住居の取得等の日から6か月以内に親族が入居し、引き続き居住し、転勤が解消した後は所有者が共に居住することが認められるとき」は、住宅ローン控除が適用されます。ただし、住宅ローン控除を受ける本人は国内に住所を有する者に限られ、国内の源泉徴収票が必要です。海外転勤し、勤務先の国で徴税されることになれば、その期間は対象外となります。なお、住宅ローン控除が適用される年の12月31日時点で、親族が居住していない場合、控除は受けられません。適用期間中に転勤が解除され、再び居住する場合は残存控除期間があれば、再適用になります。借り換えを行うときは借入期間に注意金利が低い住宅ローンに借り換えを行う際も「新しい住宅ローンが当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らか」であれば、控除を継続できます。ただし、借入期間を10年未満に設定してしまうと、「住宅ローンの返済期間が10年以上」の要件を満たさなくなってしまい、控除を受けられなくなります。控除が受けられなくなれば、住宅ローンの額を減らせても負担が増えてしまう可能性もあります。特段の事情がなければ、借入期間は10年以上に設定しましょう。繰り上げ返済や借り換えをした場合は金融機関へ連絡を繰り上げ返済や借り換えをした場合は、住宅ローンの年末残高の額が変更になります。当初の「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」と実際のローン残高の整合性が取れなくなります。そのため、繰り上げ返済や借り換えをした場合は、金融機関に連絡し「年末残高等証明書」の訂正を依頼しましょう。まとめ住宅ローン控除とは「年末時点のローン借入残高に控除率を乗じた額」が所得税額から控除される制度です。誰にでも適用される訳ではなく、一定の要件を満たさないと控除対象になりません。住宅ローン控除の初年度は、会社員であっても確定申告が必須です。確定申告に必要な書類は多岐にわたり、取り寄せが必要な書類もあるので、早めに揃えておくと安心です。もし、住宅ローン控除で不明な点があれば、所轄の国税局や税務署への電話相談や、銀行やファイナンシャルプランナーに無料相談ができる場合もあるので、活用してみましょう。